教育業界の現場は「長時間労働とサービス残業に抵抗感がないリーダー」が多い。
またそのせいで社員やアルバイトなど退職をする先生が多いのは、学校も塾も同じであると思う。
そういった体質は塾であれば会社上層部や現場のリーダーの考え方だったり、学校であれば長年続いてきた文化であり、なかなか壊せない。
本当の意味での働き方改革が進んでも「帰りづらい雰囲気」では全く意味がないのである。
【管理職に】ブラック業界でサービス残業を廃止したら何が起きたか【拡散希望】
入社したばかりの頃はそんな現場の長時間労働に疑問を持っていても、
管理職になると実際に長時間労働をなくす具体的な策がないがゆえに、
「若い頃自分が嫌っていた上司に限りなく近い状況に、自分がなりつつある」
なんてことが起こる。
たしかに若い先生は労働環境の改善に関して、
「労働時間を短くするのは会社と上司の責任!」と主張ばかりして、具体的にどうやって実行するかまでは考えていない人も多い。(教育業界に限らずどの業界にもいるが)
そういう人は自分が上司になった時に、部下から自分の若い頃の主張と同じことを言われるが、主張ばかりしてきて具体的な策がないから、
「そういうものだ」としか言えない。
負のスパイラルである。
少し話が変わるが、
先生は良い意味でその閉鎖的な空間がゆえに、
「改革のために強権を発動することも可能」な世界である。
だからその強権を発動すれば、自分の管理下の範囲に限定されるが、
「サービス残業の完全廃止」は可能である。
良い意味でも悪い意味でもだが、
保護者がどんなに文句を言おうが、
子供からどんなに人気がなかろうが、
先生は「その立場」を守られることが多い。
特に学校はそうだなどと言うつもりはない。塾も同じである。
私はこの守られた環境と、行使できる強権の強さから、
先生はビジネスリーダーとして、現場で出来なかった、難しいと思われた改革を行うことができると思っている。
その1つとして教育現場に古くから残された悪しき文化、
「長時間労働の抵抗感の低さ」と「サービス残業をなくす具体策がない」
この状況はリーダー次第で、教育現場では比較的容易に変えられると思っている。(少なくとも塾は絶対に可能)
(※比較的容易の比較対象は私の勤めていた転職エージェントである。大企業の改革は難攻不落だ。もしそれをやろうとすれば待ち受けるのは多大な社内政治の調整である。そして実際には途中で反対勢力によって頓挫する。)
実際にここからは私が行った、強権発動の改革である。
参考にして欲しいし、この程度ならできると思って欲しい。
長年、塾業界ではアルバイトスタッフへの22時以降のアルバイト代は不支給とする暗黙の悪しき文化があった。アルバイトスタッフの時給は22時までしか支給されない仕組みの塾は多い。(会社は22時に帰らせろと管理職会議で言ってはいた)
それ以降はいつタイムカードを切っていようが、時給は支給されない仕組みになっている。学校も給特法があるので仕組みこそ違うが、一定の時間を超えたら給料が発生せず「労働に対して賃金で損をする」と言う意味では似たような状況だろう。
しかしだいたいどの塾も21時半から22時が生徒の帰宅のピークである。
なので生徒を帰宅させ、生徒の帰宅後しか出来ない仕事をアルバイトにやらせればそれだけでたかが5分でもサービス残業になってしまう。その後に社員に報告の義務など背負わせたら軽く30分のサービス残業が発生する。
それを「仕事が終わってないのだから当たり前」と言って、多くの管理職はその状態を改善させるようなことはしてこなかった。
これがまさに教育現場に残る悪しき文化
「サービス残業に抵抗感がない」の典型例である。
それがゆえにアルバイトスタッフは「なんとなく毎回15〜30分のサービス残業は当たり前」
みたいなのが、完全に根付いており、
それがスタッフの不満となっていることにも、見て見ぬ振りをしていた現場の管理職は本当に多かった。(何度も言うが会社は22時に帰らせろと管理職会議でいつも言っていた)
まず私はスタッフに正しく働いてもらうために以下のことをした。
・22時以降は会社の仕組み上残業代が出ないことを理解してもらい、22時1分にはタイムカードを切って帰宅するように指導した(強権を発動しても22時以降の残業代の支給はすることは現場レベルでは不可能だった)
・「22時までに仕事を終わらせるように工夫することが仕事だ」と常々言い聞かせ、それでも終わらなかった仕事はやらないで帰ることを許可した
・即対応しなければ生徒や保護者に不利益になるような場合を除き、基本的に報告はしなくても良いことにした。また、生徒の不利益にならないが報告しておいた方が良いとスタッフ自身で判断したことは、22時過ぎてバタバタしている私に話ができるまで待って直接報告する必要はなく、塾を出て駅に向かう途中にメールで簡単に送ってくれればそれで良しとした。
しかし「表面的に22時に帰らせる」だけでは、社員の負担が増えるだけだ。やりきれなかった仕事は無くならない。
そこで重要になるのが「教室の方針の共有」である。これは本当に大事だ。
むしろ本題はこっちである。
教室の方針が徹底してアルバイトスタッフにまで浸透していると、
わざわざ社員に仕事をもらいに行く必要もなくなるし、
方針に基づいて優秀なスタッフが各自の判断で仕事を行う
ことになる。
「サービス残業をなくすことの本質」というのは、
・教室の方針を徹底的に共有することで、社員しかできない対応を減らし、社員及びアルバイト双方の労働時間を減らすこと
・適正な働き方はスタッフの労働意欲と上司との信頼関係を向上させ、その環境の良さが生徒及び保護者へサービスの向上となって還元されること
結局はこの2点だけなのである。
また、教室の方針は
「誰にもでもわかる」
「誰にでもできる」
ことも重要である。
例えば、
「地域で1番信頼される塾」とか「生徒が自然と集まってくる教室」
これだと、アルバイトスタッフ含む教室全体のスタッフに共有するにはあまりにも抽象的すぎる。(社員だけなら良いが)
そして残念ながら「そんなことどうでもいい」と思うスタッフが増えるのがオチだ。
方針は「かっこいい壮大な言葉」や「社員の数字に直結するようなビジネスチックなもの」よりも、
「全てのスタッフに100%浸透させられるもの」
を優先すべきであると考えている。
できない理想論より、実行できる具体策の方が有意義である。
私はアルバイトスタッフに常々言って来たことは、
「生徒の質問には生徒が納得するまで徹底的に対応すること」
「勉強以外でも生徒との会話を増やしコミュニケーションを取ること」
この2点だけだった。これくらいなら誰だってできる方針だし、行動に移しやすい。
この程度のことができないで先生と呼ばれるスタッフがいるのなら、リーダーは強権を発動してシフトから外せば良いだけだ。私の教室のスタッフは優秀だったのでそんなスタッフはいなかったのは幸せだったかもしれない。
リーダーが全体へ浸透させた方針が100%実行されていれば、
「報告の義務」がまずなくなる。
だいたい報告が多すぎて、共有の時間が長いから、
「方針の共有」によってその報告は極限まで減らせる。
「良い報告」なんてのはリーダーの耳に入らなくても、数字として結果に現れる。だから限られた時間の中で業務をするにあたって良い報告は時間の無駄だ。ましてや給料の発生しない時間に良い報告させるなんて論外である。
「悪い報告」はリーダーと共有する必要がある。勤務時間内ならスピーディーに報告を直接あげるべきだとは思う。
しかし塾現場において悪い報告は大抵遅い時間にやってくる。
よって給料の発生しない時間に入ったのに直接報告を聞くために自分の手が空くまでスタッフを待たせるなんて最悪である。やり方を工夫すれば書き置きやメールで十分対応可能だ。詳細に報告を残しておいてくれと言っておけば済む話である。
まとめ
・リーダーは常々方針を言って姿で見せることで、全スタッフと方針を100%共有する
・全スタッフがその方針に100%従って、各自の裁量で業務にあたることで報告の必要な問題は起きにくくなる
・塾における22時以降のサービス残業の諸悪の根源は 「報告」
・方針に基づいて生まれた良い報告は時間の無駄だから不要
・悪い報告は報告の仕方を工夫すれば、給料の出ない時間にスタッフを待たせるなんてことにはならない
・適切な労働環境と、誰でもできる方針の共有は、スタッフの労働意欲を高め、生徒へ提供できるサービスの向上に繋がる
・結果、クレームが減って自身の労働環境も改善される
全スタッフと方針が100%の共有ができないことで困っているリーダーは、以下に思い当たる節がないか確認して、新しい方針を打ち出してほしい。
・抽象的すぎる
→「笑顔溢れる」とか「明るい雰囲気」とか具体的な行動として何をするべきかわかりにくいものは実行できないから浸透しない。
・リーダーや社員の利益になるような方針
→「地域ナンバーワンを目指す」とか「生徒が集まる」などは社員の方針をアルバイトにも押し付けただけ。社員の方針は社員とだけ共有すること。ただし社員の方針は空くまでも「法律」。全スタッフとの方針は「憲法」である。憲法の方が上だと意識すること。
・リーダーが方針とズレたことをしているか、方針に沿ったことをしていない
→意外と多いのがこれ。センスの良い方針を持っていても、できていないこともある。自分のできない方針をスタッフにやらせるのは不可能。方針は自分が自信を持って100%実行できるものにすること。
長時間労働とサービス残業に抵抗感のない上司や会社の体質を変えるのは非常に困難だ。
変わらない老害に不満を言うのも結構だが、自分ならこうやって労働環境の問題を解決させるという具体策を必ず持っておこう。具体策もないのに理想論と言う名の不満を言っても自分の利益にはならない。
教育現場の改革は、若い先生が出世した際に行われる。具体策を自分の管理下でまず実行してほしい。
参考文献
9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方 (中経の文庫)
- 作者: 福島文二郎
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2015/11/13
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