塾のあの営業ノルマの達成方法に関する内容はこれまでもいくつかやってきたし、これからも無限に紹介するつもりである。
【前年比142%増】生徒数を増やす学習塾と私立学校のマーケティング【確率思考の戦略論】
今回も当然「生徒数を増やす」「退塾者を減らす」に直結する営業の話なのだが、
どちらかというと「経営戦略としてのスタンス」について話していきたい。
また今回の内容は、
書籍「確率思考の戦略論」を塾スタッフにわかるように説明したものである。
確率思考の戦略論によってユニバーサルスタジオジャパンは今やディズニーと肩を並べるテーマパークとなったと言っても過言ではない。
ただそんなユニバーサルスタジオのような壮大な話ではなく、現場の塾で十分できるレベルのもののみ扱っていく。
サービスや商品の購入確率は
「認知度×好意度×配荷率」
で決まるという考え方。それぞれをパーセントで表し、かけ算をしていく。
(書籍内においては好意度はプレファレンスと表記されている)
認知度→その商品やブランドが認知されているかどうかの値
好意度→その商品やブランドがどれだけ好きかを表す値
配荷率→買う意思がある際に買える状況にあるかどうかの値
例えばあなたが服を買おうと思った際に、
「認知度×好意度×配荷率」によって確率で決まっている。
当然、しまむら??となれば「認知度0%」を掛け算するから購入確率は0%になる。
またユニクロ信者だった場合は「好意度100%」となるのでユニクロでの購入確率はかなり高い。ただしユニクロがどうしてもない場所にいる場合は「配荷率0%」となるので他のブランドに頼ることになる。
無印良品は知ってるし好きだけど今住んでいる場所からかなり離れた場所に行かないと店舗がないみたいな状況も「配荷率10%」となるので、無印良品での購入は諦めることになる可能性が極めて高い。ただしかなり離れた場所に行く可能性もあるので0%とまでは言い切れない。
このようにサービスや商品を購入する確率は「認知度×好意度×配荷率」で表すことができる。
掛け算なのでどこか1つの項目が著しく0%に近いとサービスの提供は滞る。
「知られてない」「嫌い」「買えない」を1つでも満たすと話にならないのだ。
これを子供や親が塾を選ぶ際にもこの3項目で選んでいると考えてみる。
例えば東進衛星予備校は塾予備校業界において「配荷率」ではトップだと思われる。都心だろうが地方だろうが駅前のテナントにまず入っている。
スクールIEもなかなかの配荷率の高さを誇っていると言っていい。
「どこにでもある」「通いやすい場所にある」ことが配荷率を高めるポイントである。
また河合塾は学校への全統模試提供のおかげで高校生の「認知度」は相当高い。都心部のターミナル駅にはまず校舎があるが東進と比べると配荷率は低め。だから河合塾が置けない規模の地域には「河合塾マナビス」を置いて東進に対抗している。河合塾の配荷率の低さを補った戦略だと言える。
また理系から圧倒的指示を受ける駿台。理系学生は駿台の理系の授業に「好意度」を抱いている。だから河合塾より少々立地が悪くても、学校で駿台模試をやっていなくても、好意度の高さが決め手となり駿台へ通っている生徒はいる。
神奈川県の小中学生向けの塾では広告戦略により「認知度高め」の臨海セミナーを筆頭に、
授業を徹底的に売りにしていることから保護者の「好意度高め」のステップ、
河合塾マナビスと森塾との提携も含むと「配荷率高め」の湘南ゼミナール、
全ての項目において劣っていると思われる「中萬学院」がある。
しかし塾激戦区神奈川県においても、
この4つの塾は東京都心部では圧倒的認知度を誇る早稲田アカデミーには苦戦。西東京から東京に攻め入るもenaの配荷率に劣っており、千葉方面から東京に攻め入るも市進学院の認知度に劣る。
また大阪に出れば今まであげたような塾など認知度は0%に限りなく近い上に、配荷率もほぼ0%だ。大阪では馬渕教室が圧倒的認知度を誇っている。現状、ステップの好意度がどれだけ高かろうが大阪の子供がステップに通うなどあり得ない。
また全国を見ると栄光ゼミナールやスクールIEが認知度と配荷率高め。
このような3項目の掛け算にてどの塾に通うかは決まってくるのである。
ではここからは現場の教室スタッフが、どのようにして生徒を集めるかを解説していきたい。
どこの塾に通うかは「認知度×好意度×配荷率」で決まっている。
この確率が1番高いところに通う可能性が最も高いのだ。
この確率を高めるためにそれぞれ3項目において何をすべきか考える。
認知度アップ
企業レベルで認知度を上げたいなら広告宣伝費を投下すれば良い。CMをバンバン流して駅の広告を乗っ取ってしまえば生徒は集まる。
ハズキルーペの認知度が全国区になったのはあのCMのおかげだ。
しかしこの方法による認知度アップには莫大な費用がかかる。費用対効果が高いかは怪しい。
しかも現場単位ではこのような大掛かりな宣伝は無理だ。
よって現場で行える認知度アップは限界があるが以下のような方法も有効である。
・校門前配布で塾名を大きめの声で言う
・ポスティングで塾名が上にくるように投函する
・塾の看板は夜中も電気つけたまま
・塾の名前が入ったグッズを生徒に配布して使ってもらう
・公立は厳しいが私立なら校内でグッズ設置の交渉をする
・電話で「塾名と無料体験が始まりました」とだけ伝えて切る
・生徒が学校で塾の話をする
細かいところにこだわりを持って認知度を上げようと思えば、効果はそれなりにあると思う。悪い目立ち方でも認知度は上がる。
そしてとてつもなく効果が高いのは良い意味でも悪い意味でも「生徒同士の噂」である。
これがない場合は企業の広告宣伝費頼みとなる。
好意度アップ
好意度アップは現場でできる最大要因。良くも悪くもだが企業がどれだけ広告費を投下しようが現場で嫌われたら客はこない。良くない噂でも認知度は上がるが、好意度は下がってしまうのだ。また好意度の高さは在籍生徒が退塾しない要因にもなる。
具体的にできることはたくさんある。
・授業の評判が良い
・スタッフの対応が良い
・実績が出ている
・服装が清潔
・教室内の清掃が行き届いている
・生徒のマナーが良い
・スタッフの顔が良い(イケメン、可愛い)
・人間性の評判が良い子が通っている
・学年1位が通っている
・中学高校受験で志望校を落とした生徒が少ない
・教室から怒鳴り声が聞こえてこない
・生徒が楽しそうに過ごしている
・可愛いキャラクターがいる
・掲示物が可愛い(かっこいい)
・生徒が受付で楽しそうに話している
・生徒と先生の接触回数が授業以外でも多い
・気持ちのいい挨拶が聞こえてくる
言い出したらキリがない。まだ他にもあるだろう。
このブログを見ている人が現場の責任者やスタッフなのであれば、教室の好意度を上げることに全力を尽くすべきだ。
少なくとも好意度100%なら生徒は辞めない。
配荷率アップ
これは現場レベルでできることはほとんどない。
塾のテナントは会社が決めた固定の場所だし、人の流れは駅や道路によって左右される。
ただ配荷率が高めの校舎はターミナル駅だったり、駅から近いことが多い。ただし配荷率が高ければ絶対に客が来るわけでもない。当然ライバルもいる。ライバルが自社の認知度と好意度を上回ったらこない。
よって会社レベルで配荷率の改善は必要だが、現場の人間が「配荷率をどうにかしよう」としてもそれは無理な話と言える。
企業のできる配荷率の高めかた
・校舎数を増やす
・人の流れがあるところに教室を置く
・大きなターミナル駅に置く
・あえて塾激戦区に出店攻勢する
塾に通ってくれる確率は、
「認知度×好意度×配荷率」
これで決まる。
どこか1つでも欠けていると著しく確率は低下する。
3つをバランスよくやることが企業としては必要だが、現場レベルだとどうしても好意度一択になりやすい。
生徒から地域から愛される塾予備校作りを。
そのために何をすべきかは責任者の技量が問われる。
そしてこのマーケティング理論を書籍として発売した森岡氏と、ユニバーサルスタジオジャパンにはこれからも敬意を評したいと思う。
確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力
- 作者: 森岡毅,今西聖貴
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2016/06/02
- メディア: 単行本
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