生徒に提出物の期限を守らせたい先生はたくさんいる。
なぜあそこまで期限にこだわるのかは当時謎だったが、
社会人になると社内の仕事の納期を平気で破る者がいるのだから、ある程度学校で期限を守ることが大事だと教育するのは間違っていない。
そこで今回は「生徒の提出物の期限を守らせる方法」について心理学を使ったアプローチとその用語を紹介したいと思う。
ただし提出物は「年金の納付期限」と似ており、常に100%にするのは難しい。
今回紹介するのは100%に限りなく近付け、その高いパーセントを維持することは可能である。
提出物を期限までに提出させる効果の高いフレーズ、それは、
「提出率を発表すること」である。
提出しない生徒に、
脅しをかける
催促する
説得する
これらはほとんど効果がない。
イギリス国税庁によると納税の期限を守らない国民に対し、
延滞金の発生
未納によるデメリット
を督促状に何度書いても効果がなかったようである。
ところが「大多数の国民は納税をしています」
との文面を記載したところ(民間の債権回収業者も使ったが)
滞納金の回収率は56%から86%へと上昇した。
100%じゃないのか!と思うかもしれないが、
そのたった一文でここまでの効果があげられたのを見ると、その労力や費用に対する効果はかなり高いものであると言える。
先生は忙しいのだ。
だから100の労力を割いて100%にするくらいなら10%の労力で80%にする方が絶対に良い。そして前にも話したが提出物は常に100%にはできない。
だからこそ少ない労力で、高い効果をあげる必要がある。
この「みんなそうしているから自分もそうする」
のは心理学において「社会的証明」と呼ばれている。
社会的証明は実に効果が高いが、その実例を学校の先生や塾の先生用向けに解説した書籍は少ない。(ていうか多分ない)
社会的証明とは「他人の行動を基準として、自分もその行動に寄せる」
という考え方である。
「みんな一緒を強制」「同調圧力」もほぼ同義語であるが、
これは日本人特有のものではない。全世界の人間が共通して持っている本能みたいなものである。
話を教育の現場に戻す。
提出物の提出率はおそらく80%を超えているはずだ。
何もしなくても「この日まで」と言えば8割の生徒は期限を守って提出をする。
残りの2割は脅しをかけても効果は薄い。
成績が下がる?「上等だぜ!」くらいに思っている。
だからあえてそこは提出をしている生徒の率を公表しよう。
提出をしている大部分の生徒にスポットを当てるのだ。
心が痛まないのであればその数は正直、
「実際より多めに言う」でも良い。クラスの提出率ではなく学年の提出率であるみたいに範囲を広げれば良い。
実際には80%だったとしても、対象の範囲が広ければ「90%」にしても数字を盛っていることがバレたりはしない。(ただしあまりにも実態とかけ離れた盛りすぎた数字だと嘘と見抜かれるので注意が必要)
私は生徒の退塾率について公表をしていた。(比較優位になるように言うこと)
・今月は退塾が0%だった
・あまりにも辞めないから机が足りない
・他の校舎はだいたい夏期講習後に5%くらい退塾するけど、この校舎は1%だったからほとんど辞めてない。逆にこの状況で辞めると言い出す方がすごいわ。
とよく言っていた。
この「みんな辞めないから自分も辞めない」と言う社会的証明をうまく使った例である。
だから提出物も「みんな出してるから自分も出す」という状況を生み出せば良い。
そのためには提出している大多数派をしっかり強調することで問題は解決する。
「社会的証明」は実に効果が高い。
このブログでも何度も登場するのでチェックしてみて欲しい。