「勤務時間中に行う授業の教材研究を、勤務時間にできないのはおかしい。」
「教材研究なんて勤務中にやるもんじゃない。家でやれ。」
教育現場を取り巻く上司と部下のいざこざは様々であるが、教材研究を勤務中に行うかどうか、これは比較的若い先生から出る要望であり不満でもある。
勤務中の教材研究に関して、学校も塾でも「禁止」とはっきり明言しないまでも、「暗黙の了解でやらないことになっている」ところは多い。
私のいた塾は、
休憩時間含む勤務中は一切教材研究禁止派(8割)
法定時間内は禁止派(2割)※休憩中や早出残業中は可
2種類の上司がほとんどだった。
「やることやってれば自由派」も、ごく一部だが実際に出会ったことはある。
ちなみに私は勤務時間内でも教材研究は認めていた管理職であり、かなり珍しいタイプだった。要するに「やることやってれば自由派」だった。
教材研究を勤務時間内に行うことに関して否定的な意見を持つことが多い管理職の先生と、
教材研究を勤務時間内に行えないことに関して不満を持つことが多い比較的若い先生に対して、
私の持論を以下、3つ展開していきたい。
①教材研究をしてはいけない理由がひどい
②家で教材研究はすべきかどうか
③目指すべき働き方で就職先(転職先)を見定める
①教材研究をしてはいけない理由がひどい
まず法定労働時間内(8時間)に教材研究を行うことができない可能性が高い順番に並べると、
大多数の学習塾>公立>私立>ごく一部の学習塾
もちろん1つ1つの学校や塾を見ていけばこれに当てはまらないものもあるとは思うが、全体の話を聞くとこれが正しいと思う。
「繁忙期はあまりにも業務が多すぎて勤務中に教材研究する余裕がない」
これならまだ許せる。
それは業務の特性上、仕方のない部分であり、それを受け入れられないなら先生にはなるべきではない。
しかし、
「業務の効率化をして時間を捻出したのに、その時間を使って教材研究をすると上司から注意される」
という状況は意味がわからない。
(業務の効率化に関しては該当のブログをご覧ください)
たいていこういった上司の教材研究をしてはいけない理由は、
「教材研究なんて家でやるものだ」(体育会系の考え方)
「万が一緊急の仕事が入って教材研究ができずに授業になったらどうするんだ」(教材研究を認めている塾があることは棚に上げている)
この2つが多い。
まあ要するにこういった人たちの真意は、
「俺の頃は教材研究を家でやるのは当たり前だったから、お前も家でやれ」
ということなのである。
教育業界に長く根付いてきた「悪しき体育会系の論理」が、学校塾問わず蔓延ったゆえに「勤務中の教材研究は禁止」という結果を引き起こしていると考えている。
②家で教材研究はすべきかどうか
ただ、私は仮に全ての教育現場で勤務中の教材研究が解禁されたとしても、
家で教材研究することは必要であると考えている。
管理職は以下の考え方を悪用しない程度に部下へ浸透させ、
質の高い授業を生徒へ還元できるよう努めるべきである。
まず、教材研究を「家か職場か」という考え方が間違っている。
正しくは「家でも職場でも」なのである。
「家か職場か」タイプは先生になると悲惨なことになる。
各役職および授業に対する授業の質を追求する先生の言い分はこうである。
左下の先生は「勤務時間中に教材研究できれば良い授業ができる」
と思っているが、それは大間違いである。
勤務時間中に教材研究ができれば、右側の先生はさらに良い授業を提供するようになる。
よって、左下の先生の授業は「絶対評価では良くなる」かもしれないが、「相対評価では変化しない」ことを理解していない。
だから結局先生としての授業力も、生徒からの人気度も相対的に変化しない可能性が高い。
先生になった目的が人によって違うのはわかるが、
いかなる理由で先生になったとしても「授業が下手」は致命傷である。
先生の評価は様々な要因から成り立つことのは間違いないのだが、
他の先生と比べて授業がうまいことは、人気で影響力のある先生になるために必要な条件であることは間違いないのだ。
その証拠に、勤務中に教材研究することを認めている大手塾で教科主任をしており新人研修も担当していた先生の証言によると、
・授業が下手な先生は勤務時間中にしか教材研究しない
・授業が上手な先生は家でも教材研究をしているし塾でもしている(推奨)
とはっきり言っていた。
だから先生になった以上、
「勤務時間内にだけ教材研究をさせて欲しい」という主張は通らない。
先生になった以上は家でもやるべきだ。
ただし、
この考えを悪用して「勤務時間中に教材研究をするな」とか言う左上の上司はバカだ。
本題と逸れるので簡単にしか説明しないが、
左上の上司はどの部下からもヘイトを集めやすい。無能な部下からヘイトを集めるならまだ良いが、優秀な部下からもヘイトを集めるから授業の質が高い低い以前に、授業以外の業務がうまくいっていない可能性が高い。
③目指すべき働き方で就職先(転職先)を見定める
先生という職業は勤務時間外でも教材研究をすべきである。
それは決して座って参考書や問題集を解くという意味ではない。
いつでも授業のことを考えるべきであり、これは良いなと思ったものはきちんと覚えておくか、書き留めておく必要がある。
また、実際の授業の研究に関しては職場でもできるのがもちろん理想だが、
「家ではやりたくない」
スタンスだとうまくいかない。
授業が相対的に下手というのは先生にとって致命傷である。
授業の上手な先生は職場で教材研究をしているかは別として「家でもやっている」この事実から目を背けてはならない。
よって、先ほどの図の左下のタイプから変化を望まない人は、
・先生になるのを諦める(新卒)
・他業界へ転職する(中途)
どちらかをお勧めすることになる。
勤務中に教材研究をすることを認めている塾へ行こうが、結局家でも教材研究をやらなけば優秀な先生にはなれない。
優秀な先生になることを望んでおらず、ただ自分自身の労働問題にしか興味がないのなら、生徒にとって迷惑なので先生にはならないべきである。
結論
・授業が上手な先生は、家でも教材研究をしているのはまぎれもない事実である
・ただしそれを悪用して「教材研究は家でやれ」と言う上司は卑怯な上に無能
・業務の効率化を行って勤務時間内にも教材研究ができる時間を確保しよう
・ただしそれでも授業の準備は家で仕上げるのが、先生という職業に就いた宿命である
参考文献