平野夏紀【教育百貨店ブログ】

先生に「授業内容以外」で価値提供を目指すブログです。YouTubeにも動画あげてます。

自分がLINEを使い始めた理由を思い出せれば、生徒の遅刻を1週間でゼロにできる

生徒の遅刻の理由は親から事前に連絡の入ったものから、微妙に時間を守らないだらしがない遅刻まで様々です。

学校でも塾でも毎日起きている先生を悩ませる「遅刻」に対して以下のようなことをしている先生はいませんか。

①遅刻するなと説教する(全体、個人を含む)※こちらが本題

②遅刻がなぜダメか論理的に説明する

 


【怒らない】生徒の遅刻を減らす心理学【理詰めしない】


 

しかし残念ながら上記の方法は遅刻を減らす上で、短期的には効果があっても長期的にはあまり効果的でないのです。

 

私が担当していた教室では、親からの連絡なしの遅刻はほとんど発生していませんでした。それどころか部活で時間に間に合いそうのない生徒でも猛ダッシュで授業にやってきていました。今回はその方法論の1つをビジネスの力として紹介していきたいと思います。

 

 

現在、LINEアプリのユーザーは8000万人と言われており、使っていない人を見つける方が大変なのは数字を見ても明らかな状況です。私は2013年頃から大学の友人に言われて使い始めました。(LINEアプリのリリースは2011年)

 

ではお聞きしますが、あなたはなぜLINEアプリをインストールしたのでしょうか。

①LINEのサービス開始直後から先導切って使い始めた

②周りから使えと言われて使い始めた

③さすがに使わないと不便さを感じて使い始めた

 

②と③には共通点があります。それは「周りが使っているから自分も使い始めた」です。あまり良いイメージのない言葉に言い換えると同調圧力と言いますが、

ビジネスの世界ではこれを「社会的証明」と言います。

 

社会的証明とは「他人の行動を指針とすること」です。

そして覚えておいていただきたいのは、この社会的証明は良くも悪くも風邪のように「空気感染」します。

周りがそうしているから、自分も同じ行動を取るという心理学用語であり、ビジネスの世界、特に営業では多用することが多いテクニックになります。

 

具体的な説明の前に身近に潜む「社会的証明」を紹介していきます。

私はよく横浜中央図書館を利用しますが、大変静かな図書館です。なぜ図書館は静かなのでしょうか。それは「図書館だから」ではありません。

 

図書館にいる周りの人たちが静かだから、自分も静かにしているのです。

 

あり得ない話かもしれませんが、図書館でロックバンドがライブを行ったらその図書館は一時的に騒がしくなります。みんなが騒いでいるけれど、ここは図書館だから静かにしろ!なんてことを言い出す人はいません。

 

よって、図書館だから静かにするというのは間違っており、みんなが静かにしているから自分も静かにする。

 

これが他人の行動を指針とする、社会的証明です。

 

では話を戻します。

①遅刻するなと説教する(全体、個人を含む)

②遅刻がなぜダメか論理的に説明する

 

なぜ①をしてもあまり効果がないのか。それは遅刻を説教した時点で、「遅刻する人がいます!」と教室全体にアピールしてしまうことになり、遅刻の雰囲気が蔓延するからです。

 

最悪の説教の仕方は「遅刻する人が多すぎる!いい加減にしろ!」です。

30人クラスで遅刻が多いといってもせいぜい5人とか10人とか少数派のはずなのに、遅刻する人が多いなんて言って説教を始めたら、「遅刻が多数派」というイメージを植えつけてしまいます。

 

遅刻は社会的証明によって良くも悪くも空気感染を起こします。ですから遅刻を説教すると悪い社会的証明の原理で、遅刻者が長期的に増えるという現象が起きます。だから悪い社会的証明を引き起こす説教なんて意味がないのです。

 

あなたがLINEを使い始めた理由、それは決して誰かにLINEを使わないことを説教されたからではないはずです。

使っている人が多数派に見えたという社会的証明によって動かされた人がほとんどだと思います。LINEが世に広く普及したことで便利な世の中になりました。これを仮に良い社会的証明だとするならば、原理を真似すれば良いのです。

 

この結論から、具体的にまず遅刻を減らし、長期的に限りなくゼロへ近づける実行プランを見ていきましょう。

 

①遅刻していない大多数の生徒を教室全体で褒める

遅刻していない生徒が圧倒的多数派だと印象付けるだけで、遅刻は減っていき、だらしない遅刻は消えます。あなたがLINEを使った理由と同じです。

 

また、遅刻をしている生徒に向かって論理的に説明をしても効果はあまり期待できません。よって具体策は

②言葉を前向きに言い換える

「遅刻しないのが当たり前だ!」とかいう古臭すぎる昭和感漂う説教はやめましょう。遅刻がダメだなんて論理的にも世間のマナーとしても良くないことを生徒はわかっています。自分の大好きなロックバンドのライブには絶対に遅刻しません。

 

間違ったことを多数派の力で良い方向に持っていく指導をするのは先生の仕事です。(ただし学校や塾は軍隊教育ではありません。なんでもかんでも社会的証明で自分の意図する方向へ意見を傾かせるような悪用スレスレの行為は慎みましょう。)

 

「今日は遅刻しなかったのが30人中27人だった。素晴らしいな。」

まずはこれで良いのです。それがいずれ28人になり、29人になって、30人になります。

 

最後に補足が必要です。

社会的証明はかなり強力です。遅刻が超少数派になり遅刻が激減すると、たまたま寝坊してしまった生徒が「やばい・・・。遅刻確定だから仮病を使って休んでしまえ。」と、授業に来なくなる可能性が考えられます。

 

なので必ず「遅刻は良くないが、万が一遅刻してしまうミスを先生は怒ったりしないから、授業には来るように。」とどこかのタイミングで逃げ道も確保してあげてください。

 

この記事の参考文献

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか

 

 

 

影響力の武器 実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣

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影響力の武器 戦略編: 小さな工夫が生み出す大きな効果

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